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どう思う?根管にある折れたファイルを取るべきか?

根管治療症例  / 破折ファイル  / 院長ブログ

大変ご無沙汰しております。

新しいブログをなかなかアップできなくて、申し訳ないです。

今回は、根管にある折れたファイルを取るべきか、私の考えをお話しします。

結論から話すと、折れたファイルを取った方が根管内の消毒が行き届くなら取った方がいい
消毒効果が折れたファイルを取っても取らなくても変わらないなら、取らない意思決定も正しいです。

症例を挙げます。

46歳男性
主訴:根管治療中から噛んだ時の違和感が続いている
現病歴:右上顎第一大臼歯の痛みが出てきたのでかかりつけ歯科医院を受診し、根管治療を行なっていたが、違和感や弱い痛みが続いており、当院をかかりつけ歯科医院から紹介受診となりました。

患者さんの希望としては、噛んだときの違和感を取ってほしい、かかりつけ歯科医院がももこ歯科へ紹介した目的は、折れたファイルが根管に存在しているため、根管の消毒効果を発揮できず痛みが継続しているのではないか、とのことでした。

初診時、患者さんに説明した内容は以下のとおりです。
・折れたファイルがマイクロスコープ下で見えれば除去する
・噛んだ時の違和感がなくならないのは、折れたファイルが原因ではなく、根尖性歯周炎を起こす細菌が原因であること
・折れたファイルが根管に残っても、ファイルが錆びて腐食し、症状を悪化させることはない
・もし、根管治療を行っても噛んだときの違和感がなくならなければ、外科的歯内療法を行う

結果からお話ししますと、破折ファイルは取れず根管内に残したままですが、噛んだときの違和感は取れました

まずは、かかりつけ歯科医院の主治医の疑問点について私の意見をお話しします。

初診時 近心頬側根 2023.8.26

初診時 遠心頬側根 2023.8.26

 

 

 

 

 

 

 

噛んだときの違和感の原因は、根尖性歯周炎である可能性が高いです。折れたファイルが原因で根管内の消毒が行き届かず、根尖性歯周炎になり噛んだときの違和感があるなら、近心頬側根に根尖部透過像を認めるはずです。しかし、実際根尖部透過像が存在するのは遠心頬側根です。よって、破折ファイルが患者さんの主訴に影響を与えている可能性は低いと考えました。とはいえ、破折ファイルが取れるなら取った方が、根管の消毒効果は十分に発揮できます。破折ファイルの長さはCT上約2mm、破折ファイルのトップがマイクロスコープ下で視認できれば、取ろうと考えました。
ちなみに、口蓋根には小さな根尖部透過像を認めました。近心頬側第二根管は未形成と思われます。

結局、破折ファイルのトップはマイクロスコープ下で視認できず、そのまま留置することにしました。

根管治療後、患者さんの噛んだときの違和感はなくなりました。

近心頬側根 根管治療後6ヶ月2024.5.18

遠心頬側根 根管治療後6ヶ月2024.5.18

 

 

 

 

 

 

 

根管治療後6ヶ月、遠心頬側根の根尖部透過像は縮小しました

近心頬側第一根管の根尖部に折れたファイルは残存し、近心頬側第二根管は形成できました。根管治療後6ヶ月経過しても、近心頬側根には根尖部透過像を認めません。噛んだときの違和感はなくなり、経過良好です。

根管治療に使うファイルは、消耗品のため根管治療中に折れてしまうことはあります。
重要なのは、患者さんを不安にさせないことです。ファイルが折れてしまっても、折れたファイルが原因で症状が悪化したり、ファイルが根管内で腐食したり錆びることはなく、根尖性歯周炎の原因を作ることはないことを、患者さんにきちんと説明して理解してもらうことが重要です。

次回は、私がファイルを折って根管内に留置している症例をお話しします。