歯をもたせるための、豆知識〜その3 虫歯編② 歯髄の保存とかぶせ物のフィット感について〜
ももこ歯科のブログを読んでくださる皆様、いつもありがとうございます。
今回のブログのテーマは、歯をもたせるための豆知識虫歯編②『どうやったらもたせることができるか』です。当たり前のことですが、虫歯にならないことが一番大切です。しかし、虫歯になってしまったら、重症化しないうちに、適切な治療を受けることが、歯をもたせる重要なポイントです。
そうはいっても、痛みが出るくらいの虫歯は相当大きくなっていますし、痛みが出るまで気がつかないこともあります。
状況はどうであれ、虫歯の治療をするとなった時点で、気にかけて欲しいことを以下に示します。
1. 歯髄(神経)を保存できるかどうか
2. 虫歯を取った後のかぶせ物のフィット感
歯髄保存ができる虫歯であれば、後々大きなメリットがあります。
それから、かぶせ物のフィット感は非常に大切です。フィット感の良いかぶせ物は、治療後の歯をきちんと封鎖してくれるので、良好な治癒経過を期待できます。要するに、フィット感の良いかぶせ物は、虫歯の再発を予防してくれる効果があります。
上記1、2についてそれぞれ実例を挙げてお話しします。
歯髄保存について
症例1は、45歳女性。
主訴は、「左下の奥歯の銀歯が取れた」です。
左は銀歯が取れる前の写真です。以前から、銀歯と歯の間に隙間がある(症例1-1左の写真矢印)ことを患者さんにお伝えしていましたが、痛みはなく様子をみていました。しかし、約1年後、銀歯が取れた、と患者さんがももこ歯科を受診した際、銀歯が取れた歯の部分に深そうな虫歯があることを患者さんにお伝えし、治療をすることになりました。

まずは診査です。冷たい刺激、温かい刺激、微量の電気を歯にあてて、歯をコンコンと軽く叩いて、歯の根の先に相当する歯肉を押して、歯周ポケットや動揺を測って、その歯がどのような状態になっているか診断します。
診断の結果は、正常歯髄・正常な根尖周囲組織でしたので、生活歯髄療法を行うことになりました。
症例1-1右の写真のブルーと黄色の矢印は左右の写真で同じところを指します。このように、かぶせ物と歯の間に隙間ができていると、内面は虫歯になっていることがあり、虫歯の治療後に銀歯を入れてからしばらく経過して治ってると思っていても、再び虫歯になることがあるのです。
症例1-2は生活歯髄療法前後のレントゲン写真です。

しかし、症例1-1の患者さんがラッキーだったことは、歯髄保存ができるタイミングで虫歯の治療を受けられたことです。
今後も、経過観察を継続していきます。
かぶせ物のフィット感
症例2は、51歳女性。
当院に通院してくださっている方で、以前からかぶせ物のフィット感が良くないので、治療をご提案していました。

症例2-1の左上下の写真は口腔内写真です。
症例2-1左上写真の◯で囲っている歯の銀歯のフィット感が良くありません(症例2-1右写真)。
歯がもたなくなる状況を回避するため、患者さんの自覚症状はありませんでしたが、治療を行いました。
症例2-2左の写真は、かぶせ物をはずしたところで、黒いところが虫歯です。

かぶせ物をはずした後の虫歯の重症度を私の経験に限った印象では、この症例は軽症です。理由は、歯を保存することが可能だからです。
根管治療をしたことがある歯のフィット感が悪いかぶせ物をはずすと、かぶせられない状況になっていることは根管治療を経験していない歯よりも多いように思えます。本症例の治療のタイミングは良かったと考えています。
症例2-3は、根管治療前後のレントゲンです。

今後も、経過観察を継続します。
まとめ
患者さんがかぶせ物のフィット感の悪さを自覚することは、なかなか難しいです。本ブログの2例の患者さんはフィット感の悪さを気づいていらっしゃらなかったです。フィット感の悪さを感じている場合は、フロスが臭う、フロスが切れる、食べ物と歯の間に食べ物がよく詰まる、といった症状が多いです。
根管治療の経験がなく部分的に覆っている銀歯(症例1のような銀歯)の歯であれば何かの拍子に銀歯が取れて、大きな虫歯になっていたとしても、かぶせられないような歯の状態になっていることはほとんどないです。一方で、根管治療の経験があり歯の場合、患者さんが『取れた』と銀歯を持参し歯科医院を訪れる際には、虫歯で歯が崩壊して残せなくなっていることは少なくありません。
このような違いはなぜ生まれるのか?
それは、根管治療を行なった歯は歯髄(血管と神経がある組織)を取っているので、痛みを感じません。歯髄を保存できる状態であれば非常にアドバンテージが高いです。痛みを感じることはよろしくありませんが、危険なサインを体に送ってくれるので、大きな損害を避けてくれる証拠でもあります。
ももこ歯科では、根管治療を経験している歯でかぶせ物とのフィット感がよろしくない場合は、患者さんに状態を説明して、治療をすることも一案であるとお伝えしています。根管治療を経験した歯に痛みがなくとも、歯をもたせることに重きをおくのであれば、予防的な目的で根管治療を行なうことも良いのではないかと考えています。
根管治療の経験の有無にかかわらず、かぶせもののフィット感の良し悪しは、その歯の運命を決める要素の一つといっても過言ではありません。
また、歯髄保存ができるのであればなおさら、予防目的で積極的な治療をすることも患者さんに対して良い提案だと思います。
では、歯をもたせるための豆知識シリーズはここで終了します。
次回のブログもお楽しみに。
