『根管治療の途中で痛みが出たから薬を詰められない』このままでいいの?
ももこ歯科のブログを読んでくださるみなさま。
いつもありがとうございます。
今日のテーマは、根管治療で痛みが継続していることを理由に、薬を詰めないままでいることについてです。薬を詰められないままで良いわけはありません。本来は痛みを取る目的で根管治療を行うにもかかわらず、治療をかさねても痛みは取れないし治療が終わらないのでは、患者さんは不安が募ります。そこで今回は、不安を払拭するお話をします。
薬が詰められないでいることについて
結論をいうと、無菌的処置を基本コンセプトにしている歯内療法では、痛みがあっても薬はつめます。
薬を詰めなければ、根管治療の痛みが引くわけではありません。
痛みがあるから薬を詰めないままでいることは、無菌的処置を基本コンセプトにしている歯内療法ではしません。
ではどうして、『痛みがあると薬をつめられない』のか。
理由は、ドレナージといって、圧抜きを目的にしています。
無菌的環境下で、機械的拡大や洗浄・貼薬を行い、根管の中をベストな状態にしたにもかかわらず、痛みがあったり腫れが引かないなど患者さんにとって不快な症状が続くようであれば、根管治療を繰り返さず、外科的歯内療法を行います。
痛みを取るために無菌的処置を基本コンセプトにしている歯内療法を行っていても痛みが取れないなら、同じことをやっていても痛みは取れないので、根管治療は終了して、外科的歯内療法を行います。
根管治療中に発生した痛みが継続しているけれども、無菌的処置を基本コンセプトにしている歯内療法を行なって、痛みが改善したケースをご紹介します。
症例1:基本コンセプトを遵守している根管治療を行って痛みが改善したケース
根管治療中に痛みが出たため蓋をしなかった患者さんです。

根管治療をスタートさせて3ヶ月くらい経過しますが、痛みが出ているため蓋も薬も詰めていない状態でした。
左の写真は初診時の口腔内写真で、矢印が痛みの原因の歯です。右2枚の写真が、原因歯の拡大図です。
染色液で感染している部分を染め出すと、わりと広範囲にピンク色で染まっています。これは、虫歯というよりもプラークといって細菌の塊がピンク色に染まっています。この状態のまま長期間放置すると、病状が悪化する可能性が高くなることは、容易に想像がつくと思います。

無菌的環境下で、洗浄・貼薬を行い、根管の中をベストな状態にしたところ、痛みは改善しました。洗浄剤の抗菌効果が功を奏し、痛みが取れました。
このような症例に遭うと、一般的には補助的に使われる洗浄剤と貼薬剤の役割が非常に重要であることをいつも痛感させられます。
この症例は、蓋をしていても痛みはありません。痛みがないから蓋をしたわけでもありません。蓋の役割は細菌感染を予防することにあります。特別な場合を除き、根管治療の間に蓋はした方が良いです。
症例2:基本コンセプトを遵守している根管治療と外科的歯内療法で痛みが取れたケース
根管治療中から継続した痛みがあり、薬を詰めてはいる(根管充填)けれど、痛みが依然として残っていて外科的歯内療法で痛みが改善した症例です。

痛みの原因は、根の先の細菌を除去しきれなかったからではないか、と考えています。
根の先の部分は少しカーブしている状態で、このカーブの部分に器具を到達させることが難しく、機械的拡大ができず、細菌を除去できなかったから、痛みが残ってしまった、と考察しています。
左の写真の矢印の歯が患歯です。仮歯を外して根管治療を開始しましたら、右の写真の黄色い材料が見られました。この黄色い材料はよく使われる根管充填材料で、ビタペックスという暫間的に使用される材料です。一般的には乳歯の根管充填で使用されます。永久歯の根管充填にはガッタパーチャというゴムのような材料を使います。前医がビタペックスを使用した理由は、おそらくですが、根管治療中に痛みが取れていないので、症例1と同じような目的で、粗造な材料によって圧抜きしたかったのではないかと考察しています。しかし、基本コンセプトを遵守した根管治療における根管充填は、細菌を根管内に埋葬し、根の先に細菌を行かせないようにするために、根管を材料によって隙間なく詰めていきます。基本コンセプトを遵守した根管治療によって、根管を除菌し切っているにもかかわらず痛みが取れないのであれば、根管治療を修了させ、外科的歯内療法で痛みを取ります。

本症例は根尖部透過像を認めませんでしたが、患者さんは痛みを訴えていました。おそらく、根尖にレッジが形成されたため未形成部分ができ、痛みを発していたのではないかと考えています。実は、根管治療後外科的歯内療法を行って一度は痛みが改善されたものの、外科的歯内療法後1年ほど経過した際に、患者さんは痛みが再発した、とおっしゃっていたことがあり、以前と同様に根尖部透過像を認めてはいませんでしたが、再外科を行いました。再外科後2年が最長の観察期間時点において、痛みの再発はなく経過良好です。
要するに、痛みの原因は細菌を除去しきれなかったことにあって、詰める薬の種類によって痛みがなくなるわけではありません。
最善策は虫歯にならないことです。
しかし、残念ながら虫歯が大きくなって歯髄保存が不可能になってしまった時、無菌的環境下での根管治療はおすすめです。痛みが長引くことはほとんどありません。痛みがあっても、1週間程度ですし、鎮痛薬で対応できます。
