レントゲンで歯の周りが真っ黒になっているのは、膿がたまっているから、と言われました。膿が大きいともう手遅れでしょうか?
みなさん、こんにちは。
レントゲンで、歯の周りが真っ黒に映っていたら、ビックリしますよね。しかも、膿がたまってると言われたら、知らない間に自分の歯が悪くなっていたと感じて、ショックを受けた方も多いと思います。
ただし、 レントゲンで真っ黒になっている部分(膿)が大きいから治療をしても手遅れだ、小さいからまだ間に合うという結論にはなりません。
膿の大きさと治癒の関係
37歳男性、右下顎第一大臼歯の根の先に、黒い影(膿)があり根管治療をしました。
図1の赤い矢印で指しているところが、黒い影(膿)です。黒い影(膿)ができる理由は、根管が細菌に感染しているからです。
図1左は術前のレントゲンで、大きな黒い影(膿)があります。
図1右は、術後6ヶ月のレントゲンです。黒いところ(膿)が術前よりも小さくなっているのがわかります。ただし、レントゲンの黒い影(膿)は術前に比べて小さくはなっているものの、まだ完全に消失していません。
大きな黒い影は小さなものより、完全に消失するまで時間がかかる、といわれています。もう少し、経過観察が必要そうです。
根の先の膿の原因が歯根破折の場合
46歳女性。
主訴は、歯肉が腫れている、とのことでした。
図2左上の口腔内写真の赤い矢印がさしているように、プックリと歯肉が腫れていました。当院に受診する前に、3回根管治療を受けているそうです。
図2の左下は、術前のレントゲンです。黒い影(膿)の範囲は、図1に比べると小さいです。しかし、この歯は抜歯しました。
抜歯した歯の写真は、図2の右側2枚です。赤い矢印で指しているところに、亀裂が入っています。この亀裂のことを歯根破折といいます。
歯肉がプックリと腫れていた原因が気になるところですね。
歯肉と歯根は通常くっついています。そのおかげで歯周ポケットは正常だと3mmくらいです。しかし、何らかの理由があって歯肉と歯根がくっつけなくなった時、歯周ポケットが深くなります。この症例は歯根破折があったせいで歯肉と歯根がくっつけなくなり、歯周ポケットが深くなって、歯周病が悪化し、歯肉がプックリと腫れてしまったと解釈しています。
まとめ
以上より、治療をしても手遅れか間に合うかという予測は、歯根の先にできた黒い影(膿)の大小によって決定しないことをご理解いただけたと思います。
歯肉の腫脹や歯根の先に黒い影(膿)ができる直接の原因は、細菌です。細菌を除去できれば、歯根の先にできる黒い影(膿)を小さくする可能性は高くなります。
しかし、細菌を除去できたとしても、別の問題があるとき、治療をしても治らない場合があります。
たとえば、図2の症例のように歯根破折があると、歯根の内部にある細菌が外にもれたり、歯周ポケットも形成され歯周病を併発すると、病気を治すことは難しくなります。
なぜ、歯根の先に黒い影(膿)ができているのか、を術前に診断し、患者さんは何を望んでいるのかを問診で確認していくことが一番大切です。
次回は、治療のステップを進めていくたびに、診断をする、術前に診断がつかない場合のお話しをします。
お楽しみに。