歯を「残すか」「抜くか」迷いに終止符を〜1枚の診断シートが導く後悔しない意思決定〜
ももこ歯科のブログを読んでくださるみなさま、いつもありがとうございます。
今回のブログは、歯を残したくてももこ歯科を受診した患者さんが抜歯を選択したお話です。
症例概要
64歳 女性
<主訴>
右上の腫れと痛みが治らない
<現病歴>
2025年11月 右上顎歯肉が腫れたため、歯科医院を受診し、切開してもらったが治らなかった
2026年1月 別の歯科医院を受診し、膿が溜まっていると言われ、切開して根も切ったが治っていない。何をやっても治らない現状に不安を抱き、
2026年2月16日 ももこ歯科を受診されました。
<現症>
打診痛はなく、根尖部圧痛は右上顎第一小臼歯に認めました。歯周ポケットは3mm以内、生理的動揺を呈していました。左の写真のように、歯肉が腫れています。これだけ腫れていれば、根尖部圧痛時に主訴の再現ができますので、レントゲンとCTで原因歯の特定をします。
<画像所見>

左上のレントゲンから、根の先は切ってあり、白い丸のように写っているのは逆根管充填剤です。
続いて右上のCTです。白い矢印の方の根管は逆根管形成をして、充填剤を詰めているようですが、漏斗状になっています。この漏斗状が左上のレントゲンで白い丸に写っているところです。逆根管形成をした部分の歯質は薄くなっている可能性があります。あるいは、穿孔を起こしているかもしれません。
黄色い矢印で指す根管は逆根管形成されていないようです。
<病名>
右上顎第一小臼歯根尖性歯周炎
<患者さんの選択>
抜歯
抜歯を意思決定するまでのプロセス
この歯の問題点の提起
歯冠歯根比と歯のボリューム(残存歯質量)が少ないこと、太い土台が入っていることです。歯冠歯根比 をたとえると、家の基礎部分と上物の比と考えていただければわかりやすいです。歯冠歯根比が悪いとは、家の基礎部分がしっかりしていないのに、上物が建っているような状態です。それから、ももこ歯科の治療費は自由診療なので、高額です。最終的には患者さん自身の価値観に基づき意思決定する必要がある、と私は考えています。
各治療法についての良いところと悪いところ
根管治療
根尖性歯周炎を治すには、一般的には根管治療が第一選択です。この歯を根管治療するためには、太い土台を除去する必要があります。土台を除去する際、根が割れる可能性があります。もし、根が割れてしまったら、抜歯という結末を迎えるかもしれません。そのリスクを回避するために、患者さんが歯を残したければ、本症例に関しては歯根端切除術を第一選択に考えます。
歯根端切除術
歯冠歯根比が悪いことから、耐久性は期待できません。CTで白い矢印で指している根の歯質が薄く、仮に穿孔があると、穿孔部を含んでさらに歯根を切る必要があるので、残存歯質量がさらに少なくなり、歯冠歯根比もさらに悪化するため、歯根端切除術を行ってもどのくらいもってくれるかはわかりません。そこで費用対効果が問題となります。ほとんどの患者さんは治療を受ければ治る、と期待しています。しかし、その期待値に見合わない結果になる可能性があるなら、費用対効果は期待できません。
抜歯
抜歯を行えば患者さんの主訴である『歯肉の腫れが治らない』根尖性歯周炎は完治します。費用対効果は抜群です。治療をして歯が残ったとしても、1年以内あるいは近々に根が割れたり、再発を繰り返すことになれば、本当の解決にはなりません。リスクは抜歯後どうなるのか?という不安です。不安は、抜歯後にインプラント、ブリッジ、入れ歯という選択肢から選べて解消できます。それぞれ一長一短がありますので、主治医に聞いて決めるといいと思います。
患者さんの抜歯という意思決定
私の心象ですが、患者さんは費用対効果と現状を早く打破したいと強く願っていたように思います。そこで、抜歯を選択したようです。最終的に、ももこ歯科で治療をすることはなかったですが、本症例の患者さんから『先生の話を聞いて抜歯する決心がついた。前の先生のところで抜歯してインプラントをすることにしました。』とお電話をいただけました。
どれを選択しても間違いではありません。それぞれにリスクがあるのです。患者さんがどうしても歯を残したい、今抜歯を選べば後悔する、と歯を残すことをご希望していらしたら、本症例では根管治療より歯根端切除術を行っていたと思います。歯根端切除術なら被せ物だけでなく、土台も外す必要はないです。それから、黄色い根管を逆根管形成し充填、白い根管の材料を除去して再逆根管形成・充填をしたら根尖性歯周炎は治り、腫れと痛みは解消する可能性があります。
これからはどうする?
次にこのような機会が不幸にも訪れた際は、不可逆的な治療になる前に、ももこ歯科に受診していただけたら、耐久性に対する疑問は少なく、抜歯の順位も低かったと思います。不可逆的な治療とは、歯を削る、つまり、元に戻らない状態になることです。治療方針に優先順位をつけるとしたら、歯根端切除術≧根管治療、抜歯です。
魔法のシートの存在


上の写真は、初診時に患者さんに書きながら説明をしているA4の用紙です。こうすることで、何をお話ししていたかが立体的にわかるようになり、ご希望があれば患者さんにコピーを渡しています。
もし、このブログを読んでくださる方に、モヤモヤしていることがありましたら、一度ももこ歯科に受診して、次なる一歩を踏み出してみませんか?A4の魔法の処方箋でモヤモヤをスッキリしてみましょう!
今回、この患者さんは勇気を持って決断されました。ですが、もしこの歯が『初めての神経の処置』の段階で当院にご相談いただけていたら、これほど耐久性に悩むことなく、もっと違う未来があったかもしれません。
今、どこかの歯科医院で『神経を取る必要があります』と言われている方へ。 その一歩が、10年後、20年後の歯の運命を決めます。不可逆的な治療(やり直しのきかない処置)に進んでしまう前に、ももこ歯科にご相談ください。
次回のブログもお楽しみに。

